急増している慢性子宮内膜炎について
こんにちは。
女性のための鍼灸院 – nobori – の中村です。
ここ最近、着床障害や流産の原因として話題になっている「慢性子宮内膜炎」をご存じでしょうか。
不妊治療の病院に通っている方なら一度は聞いたことがあるかもしれませんが、当院では慢性子宮内膜炎の治療後に妊娠するケースが増えています。
そもそも慢性子宮内膜炎ってなに？と疑問をもたれる方もいらっしゃると思いますので、どのような病態なのか、どのような検査を行うのか、治療法などを分かりやすくまとめました。
また最近は、反復着床障害の方向けに「ERA検査・EMMA検査・ALICE検査」の３つの検査を同時に行う病院が増えましたが、慢性子宮内膜炎の疑いがある方はこの3つの検査を行う前にある注意点も知っておいた方が良いと思います。
こちらも記事の中にまとめていますので最後までぜひご覧ください。
慢性子宮内膜炎とは
女性の子宮内膜は表面から見ていくと、機能層・基底層・子宮筋層と呼ばれる構造になっています。月経が起こると、一番表面にある機能層の部分が剥がれて体外に排出されます。そのため、もし細菌が侵入し機能層が感染をしても、月経時に一緒に菌も排出されるため自然に治癒することがほとんどです。
しかし、細菌感染が子宮内膜の奥側にある基底層にまで広がると、月経時には外に排出されないため体内に感染が残ります。この状態が長期間続くことを「慢性子宮内膜炎(CE)」といい、検査では子宮内膜には通常いないはずの「形質細胞(CD138陽性細胞)」という白血球の一種が検出されます。
海外の研究データでは、反復着床障害（40歳以上で良好な胚を4個以上かつ、3周期繰り返し移植しても着床しないケース）の約30％の患者で慢性子宮内膜炎が確認されています。*
胚移植を何回行っても結果が出ない場合には、胚の問題以外に上記のような病態も着床不全の一因となることがありますので、一度チェックしておいた方が良いと思います。
知っておきたい検査の注意点
慢性子宮内膜炎を厳密に診断するには、子宮内膜の一部を採取し、顕微鏡で「形質細胞」という細胞を確認し、CD138細胞の免疫染色が必要です。別名でBCE検査と呼ばれるものです。
また、記事の冒頭にも書きましたが、反復着床障害の方向けに「ERA・EMMA・ALICE」の３つの検査を同時に行う病院が増えています。このうち、ALICEは慢性子宮内膜炎を引き起こす原因になる細菌を検出する検査です。ここで注意しておかなければいけない事は、ALICEで菌が検出されても慢性子宮内膜炎でない方もいますし、菌が検出されなくても慢性子宮内膜炎がいるという事です。
したがって、ALICEはあくまでも細菌の検出であって、慢性子宮内膜炎の確定診断はできませんのでご注意ください。
B-CE検査の実施時期は、月経終了後から排卵日までの時期に行います。子宮内膜の基底膜と呼ばれる奥側の細胞を採取するため、内膜が厚くなる黄体期までには検査を行うのがベストですね。
慢性子宮内膜炎の治療法
慢性子宮内膜炎には抗菌薬の治療を行います。第一選択としてはビブラマイシンを服用しているケースが多く、第一選択の薬剤が効かない場合は薬剤が変更され服用期間が続きます。
当院の患者様では、早い方で1ヶ月後、長い方だと治療に半年かかった方もいますが、慢性子宮内膜炎の治療後は、一度も着床した事がない方が無事に妊娠することができたり、40代の方でも自然妊娠をしたりと良い方向に向かわれています。
いかがでしたでしょうか。
反復着床障害や繰り返す流産に悩む方にとって少しでも参考になれば幸いです。
本日もお読みいただきありがとうございました。
鍼灸サロン – nobori - 中村 早耶香
参考文献
*)Johnston-MacAnanny EB, Hartnett J, England’s LL, et al:Chronic endometriosis is a frequent finding in women with recurrent implantation failure after in vitro fertilization. Fertil Steril 2010:93:437-41
